今こそ、ブランド力で差をつけよう!《中小企業応援リレーコラム vol.19》
がんばる中小企業応援リレーコラム
『どうする!反転攻勢の経営』~景気回復の芽を伸ばせ~第3回
「今こそ、ブランド力で差をつけよう!」
中小企業診断士 山﨑 隆由 氏
(PDFでお読みになりたい方はこちら)
■厳しい経済環境の中でも「輝き続けるブランド」もある。
1990年代のバブル崩壊以降、一昨年のサブプライム・ローン問題や昨年のリーマンショックなどが続いたことで、デパートでも、スーパーでも、コンビニでも、自動車ディーラーでも、モノが全く売れなくなったという話をよく聞きます。
確かに一般的家庭では所得が低下して、何れの家庭でも家計費の節約や買い控えが日常化したためにデパートやスーパー、コンビニなどの売上にも大きな影響が出ているものと思われます。また、自動車の販売でも買い換えサイクルがかつては「50~60ヶ月」であったものが、最近では「80~90ヶ月」を超えると言われています。
また、こうした消費者側の事情に加えて、最近は「広告の訴求力が低下している」とか、「ブランドの訴求力が低下している」といった声もよく聞きます。
製造業の技術開発力が平準化したために「技術・品質」に大きな差が無くなったとか、ブランドの種類が多すぎて今さらブランドと言われてもあまり感心がないとか、どの商品もそれ程変わらないとか、といった声もよく聞きます。
でも、本当にそうでしょうか。消費者はいつの時代でも潜在的に「良いもの」を求める気持ちを変わらずに持ち続けているはずです。食料品であれば「安心で、安全で、美味しいもの」を期待していますし、耐久消費財であれば「丈夫で、長持ちで、お洒落で、高品質なもの」を期待しています。しかし、売り手側は本当にその期待に応えられているのでしょうか。確かに、市場に数多くの商品が溢れる中で、個々のブランド力が相対的に低下していることは否めないことですが、そうした環境にあっても依然として「輝き続けるブランド」が数多く存在していることは注目に値します。
本稿ではこの辺りの事情をもう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。
■広告環境の変化で、中小・零細企業にもチャンス到来
昨今の厳しい経済状況の中では、売り手側も多額の設備投資が必要となる「技術力」「品質力」を競い合うことよりは、とにかく「安くて価格競争力のあるモノ」を提供して、少しでも売上を伸ばすことを優先する「経営戦略の流れ」が強まっていることも事実です。しかし、そのために徹底したコスト削減が求められることになります。
そこで、一番大きな固定経費である「人件費」を削減することは勿論のこと、昔から経費節減の常套手段である「3K(交通費、交際費、広告費)」の削減も進んでおり、企業によっては「広告費」を半減したり、「広告・宣伝部」の人員自体を半減するといった企業も珍しくありません。この様な取組みによって、「広告の御三家」と言われる化粧品・トイレタリー/食品・飲料/自動車・家電分野の広告費は、ここ数年で大幅に低下しています。これら大手広告主の広告・宣伝費の大幅な削減は、単に一企業の問題に留まらず、広告業界全体の売上の低迷に直結することは勿論のこと、新聞広告やテレビ広告、雑誌広告などの低迷にも一層の拍車を掛けています。
しかも、消費者のライフスタイルは益々多様化しており、メディアに対する期待・利用も大きく変化しています。かつて「テレビっ子」と言われた低年齢世代ですら、テレビをほとんど見ないという時代を迎えつつあり、新たに「インターネット活用」が大きく伸びている状況でもあります。こうした変化は「マス広告一辺倒」であった日本の広告業界に一石を投じるものであり、大企業中心の広告市場にも構造的な変革を引き起こすであろうと言われています。また、こうした新たなメディア活用の動きは、企業のコスト削減が限界に近づいていることの現れでもあると考えられます。
■「こだわりのモノ作り」が中小・零細企業の生命線
では、本当に商品は安ければ売れるのでしょうか。
日本には、昔ながらに「モノ作りを大切にする」という伝統があります。「丁寧なモノ作り」「伝統に培われた匠の技」「本物の素材感」「自然を生かしたモノ作り」など、言い出せばキリが無いほどにこだわりのキーワードが浮かんできます。
また、日本が昔ながらに培ってきた「モノ作りを大切にする」の原点は、何と言っても「お客様第一主義」であると考えられます。お客様に喜んでもらい、永く使ってもらい、決して無駄なことはさせないという職人魂が、日本の伝統のモノ作りを支えてきました。このこだわりは、単純に職人からの一方通行のメッセージではなく、ユーザーである消費者の期待や思い入れとも一体となって、日本のモノ作りの伝統が醸成されてきた訳です。この「お客様第一主義」は、製造業だけに限定される話ではありません。呉服・百貨店業や商社・小売業、ホテル・旅館業などのサービス業にも通じるものがあり、永くお客様から信用されること、愛されること、頼りにされることが商売の原点であるという考え方は、広く一般的に定着していると考えられます。
こうした「モノ作りを大切にする」「お客様第一主義」の考え方こそがブランド作りの原点であり、ブランドを育成する市場環境そのものであると考えられます。
市場にモノが溢れている時代では「安ければ何でも良い」という商品もたくさんありますし、「一通りの機能が揃っていれば良い」という市場ニーズも存在しますが、現在は市場にモノが溢れている時代だからこそ、『こだわりのモノ作り(独創性・独自性)』が大切になっているとも考えられます。価格競争では大手企業に勝ち目の無い中小・零細企業にとっては、この『こだわりのモノ作り』こそが生命線とも言えます。
■「こだわりのモノ作り」を生かす「ブランド作り」と「コミュニケーション」
そこで、この「こだわりのモノ作り」を上手に「ブランド作り」に繋げる方法を検討してみましょう。「ブランド作り」を進めるためには、まず、お客様である「ターゲット」を明確にすることが必要です。その上で、そのターゲットが求める「期待品質」を実現することが必要になると共に、この期待品質の維持・向上を図るための「サービス体制」を確立することが必要となります。全てのお客様に対して、全ての期待を満たすことは不可能です。限られた経営資源を、限られた市場に効率的に投入することで期待品質に対する「実現水準・達成水準」を高めることがポイントです。
「ブランド作り」が単なるお洒落なイメージ作りや知名度アップでないことは当然のことですが、経営者や技術開発責任者のビジョンやこだわりが「ブランド作り」の大前提であり、そのビジョンやこだわりをサポートするためには、従業員との価値観共有や協業体制を確立することが必要であることも当然であると言えます。
また、ブランド・コミュニケーション戦略における「メッセージ作り」では、単に「商品の利便性」や「社会的なニーズ」をメッセージ化するだけでは不十分です。「ブランド作り」は消費者の感動作りでもありますので、「消費の動機付け」や「消費者の自己実現」のメッセージをあらかじめ付加することも重要です。これらの要素が総合的に組み合わされることで、『ブランド・コンセプト』が構築されます。
従来であれば、この『ブランド・コンセプト』の構築までがブランド・コミュニケーション戦略作りの山場でしたが、最近ではここからがまた面白くなっています。前述の通り「マス広告」の効果が著しく低下した広告環境にあっては、マス広告に加えて店頭演出・イベント・人的販売・PR・Web活用・口コミ演出・コミュニティ作りなどの活用を含めた統合的なコミュニケーション(IMC)への期待が高まっています。
大手・中堅企業の独壇場であった「ブランド作り」が、中小・零細企業の手に移りつつあります。中小・零細企業だからこそ出来る「ブランド作り」が求められています。









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